だから夏の甲子園が好きなんだ
試合の"流れ"を感じるからおもしろい
お盆休みも、夏の甲子園は少しも冷めることなく、むしろ燃え上がるような熱戦が繰り広げられていますね。
(ブラック部活動と言われる傾向や、高校野球の興業化などの話題は難しいので置いておきます…)
私は高校野球が好きです。それ以前に野球が好きなんですが、野球というカテゴリの中でも、高校野球が一番好きです。
そして、高校野球というカテゴリの中でも、"夏の甲子園"が一番好きです。
それは、"流れ"を手に取るように感じることができる(ような気になっている?)からです。
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
野村克也さんが使った言葉だそうです。元をたどれば、江戸時代の大名である松浦静山が用いたそうな。
思うに、"不思議"≒"流れ"ではないかと。
甲子園、高校野球に限ったものではないですが、物事には流れがあって、不思議とうまくいくこともたくさんあると思います。
「なんだかよくわからないけど勝った」
みたいなことは当たり前のように起こっているのではないでしょうか。
"ムード"という言葉もありますが、押せ押せムード、イケイケムードが感じられるんですよね。
更に言えば、"甲子園の魔物"ってやつが本当に存在するのではないかと。
代打に送ったバッターが打ったヒット一本から、大逆転勝利というドラマが始まることもあります。
なんだか、歴史が創り上げられる瞬間に同居しているような感覚にも陥ります。
不思議=流れではなく、不思議≒流れ
それでは、流れって不思議そのものかと言えば、そうではないのではないかと。
というのも、"流れは生み出せる"と思うからです。
特に、競技者のレベルが成熟しきっていないケースでは、流れを生み出しやすいのではないかと思っています。
チャンスをモノにする確率を上げること、ピンチを最小限のダメージで乗り切られるようにすること、流れを左右する要因だと考えます。
野球のバントひとつとってもそうです。
バントを一発で決められれば、自然とこちらのペースになります。
バントを失敗してしまえば、自然と向こうのペースになります。
ただ、ここで動じないチームが本当に強いんでしょうね。
"生み出せる"ということは、人為的に介入できる余地があるということです。
メンタルが大切なのは、メンタルによって流れが相手側にいってしまうことを防ぐことができる(その逆も然り)からなのでは…。
観客を味方につけること
"流れ"の要因のひとつとして、"観衆"が挙げられると思います。
観衆は応援団とはちがいます。
応援団が応援してくれたり、吹奏楽部の演奏があったり、それももちろん流れの要因になると思います。
しかし、甲子園では、野球好きの観衆を味方につけられるかが流れをつかむ重要なポイントになっているのではないでしょうか。
甲子園に野球観戦に行く人は、ひいきのチームがある人ももちろんいると思いますが、純粋に高校野球の雰囲気を味わいたくて、足を運ぶ人が一定数いると思います。
その人たちが流れ、すなわち勝敗の行方を左右する時があると言っても過言ではないような気がします。
「ここから逆転したらおもしろいよな~」
という期待。起こりえないだろうということに向かってゲームが進んでいく時、観衆の期待は流れとなって影響を及ぼすのではないかと考えています。
事実は小説よりも奇なりと言いますが…
【甲子園】 ※トリハダ 7点差を大逆転 東邦9回裏 感動のサヨナラ
愛知県の東邦高校が9回裏5-9の4点ビハインドの状況からサヨナラ勝ちをする試合です。
球場全体が東邦ナインを後押ししているかのような雰囲気すら漂ってきます。
藤嶋選手(東邦の背番号1、後に中日ドラゴンズに入団)のキャラクターが人気を博していたことも大きな流れを生み出した要因のひとつとも考えられます。
八戸学院光星の選手、リードしている段階でも、表情がどんどんとこわばっていき、どちらがリードしているか分からなくなります。
まさに"甲子園の魔物"の存在なのかな、と思ってしまうゲームでした。
この野球漫画はとても面白いです。
今までの野球漫画になかったタイプです。
"流れ"だけでなく、"お金"に関する描写もあり、今までとは違う切り口から野球を楽しめる漫画になっています。
(三田さんは、ドラゴン桜の作者でもあります)
※ただいまKindle版で1巻~3巻が0円です!ぜひ!
幻の三連覇、光と影
『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』
という本に出逢いました。去年の夏に出版された書籍です。
ヤンキースで活躍する田中将大投手の駒大苫小牧が、ハンカチ王子こと斎藤佑樹投手の早稲田実業と延長15回引き分け再試合を演じ、再試合で敗北したことで、三連覇は幻になりました。
この本のメインはもちろん流れのことではありませんが、初優勝、そして二連覇を達成する時には、流れの部分にも触れられています。
本作の主人公、香田誉士史監督も、流れについて言及しています。
香田監督は、流れがくると、下手に動かず、選手たちに任せることが多かったそうです。
下手に動いて大人が流れをとめてしまうのが嫌だったこともあるみたいです。
427ページにも及んでいますが、本当にページをめくる手がとまりませんでした。
香田監督が赴任し、甲子園出場、そして甲子園優勝を経験するまでのサクセスストーリー。
かと思えば、不祥事によるバッシングや、勝つことが当たり前というプレッシャー。
3年連続で夏の甲子園決勝まで率いた監督が辞任するに至った経緯。
光の部分だけでなく、影の部分もしっかりと書かれている名著だと思います。
この本を読んだことで、後味の悪さも感じはしましたが、今まで以上に甲子園に対する興味というか、関心が湧いてきました。
野球のうまさだけで勝敗が決まるということは決してなく、そのチームの雰囲気や、学校の伝統、そして地域の風土までもがそのひとつだと考えると、たかが高校野球、されど高校野球で、本当に本当に奥が深いと思えます。
甲子園という舞台に立つまでの努力や軌跡、そして生み出される"流れ"。
一試合、一試合にドラマがある。
だから夏の甲子園が好きなんです。